FileMaker 導入以前、同社では請求後の入金管理(督促管理)がExcelに依存しており、これが深刻なトラブルの温床となっていた。担当者であった福村氏は、当時の状況を次のように振り返っている。
「当時Excelは同時編集ができなかったため、誰かがファイルを開けたまま帰ってしまうと、他の人は作業ができないという問題がありました。さらに、お客様からお金をいただいて入金処理をしているにもかかわらず、誰かが保存ボタンを押さないとデータが消えてしまうことがあり、結果的に再度お客様に督促の電話をする、というクレームに繋がったこともありましたね…」(福村氏)
この高い業務負荷を軽減するため、入金消込の自動化は現場の切実な願いであった。その後、念願のFileMaker を導入したものの、長年の改修と拡張によって、やがて3つの大きなリスクが顕在化していたのである。
- 一つ目の課題は、処理遅延による現場の大きな負担であった。システムの裏側は「スパゲッティ化」し、データ作成時には1分もの待ち時間が発生するなど、深刻な遅延を招いていた。
- 二つ目の課題は、「脱サーバー(脱オンプレミス)」の指令である。サーバーのノーメンテナンス利用が長期間継続された結果、IT部門から環境刷新の指示が出されたのだ。
- 三つ目の課題は、テレワークの非効率性である。VPN接続が必須であり、接続できたとしても事務処理に通常の1.5倍程度の時間がかかるなど、業務効率を大きく妨げていた。
これらの課題解決に向け、当初は価格が抑えられるパッケージ製品も検討された。しかし、既存の自動化機能が失われるという提案がなされると、現場からは「お金をかけて機能が後退するシステムは使いたくない」という強いこだわりが示されたのである。
最終的に同社は、既存のFileMaker 資産を活かしつつ、クラウド移行を実現できるパートナーの選定を最重要ミッションとするに至った。
