パンク寸前の状態だったExcelによる有給情報管理をなんとかシステムで自動化できないか
──2014年の夏、丹野氏はこれまでもシステム構築・導入で付き合いのあったSIerのサポータスに相談を持ちかけた。その後、何度かやり取りを続けるうちに、有給情報管理と同様に、大きな課題を抱えていた他の2つの管理業務についてもシステム化を目指すこととなった。

そのうちの1つは、人事管理業務だった。
株式会社魚金の店舗従業員にはアルバイトが多いが、そのうちの半分近くは外国人労働者が占めている。それまで従業員情報は給与システムでしか管理されておらず、外国人労働者の在留資格情報などの 管理が煩雑化していたのである。

「だれがいつまで在留期間があって、いつ更新しなければいけないのかを把握しなければなりません。業務の効率化だけでなく間違いのないようにするためにも、一刻も早いシステム化が必要でした」と丹野氏は話す。

もう1つ課題となっていたのが出納情報管理・売上管理である。
従来、同社では日々の店舗での備品購入やアルバイトへの日払い、売上報告を、店舗から本部へFAXで送ってもらっていた。このように紙ベースの管理なので、本部での処理作業は煩雑を極めていたが、それだけでなく店舗からは自店の数字を確認できない、振り返れないという問題もあったのである。

3つの管理業務について現場の実態をサポータスに把握してもらった結果、 2014年の秋頃にはクロスプラットフォームのデータベース「 FileMaker 」を用いた具体的なシステム内容の提案を受ける。
その後内容について情報交換を重ねた結果、システムの導入は、有給情報管理、出納情報管理・売上管理、人事管理の順で進めていくこととなった。システム構築と平行して、データの精査も進められ、早くも2015年の春には有給情報管理と人事管理システムが立ち上がった。

「 FileMaker はさまざまな業務で使えるということは知っていましたが、実際に何ができるのかという確たるイメージはありませんでした。そのため、実際に新システムを使いながら、ここはこうしたい、あれもやりたいなどサポータスさんにお願いして次々と改善を重ねていきました」（丹野氏）

システムを構築・導入し改善していく過程の中で最も苦労したのが、そうするうちにも従業員情報がめまぐるしく変わっていくことだった。
「日々情報が変わるため、なかなか完成形にたどりつけず改善を重ねるのにも時間を要しました。最終的に望んでいたかたちに近づけることができたのも、開発側との密なコミュニケーションがあったからだと実感しています」と、丹野氏。

こうして株式会社魚金では、3つの管理業務を FileMaker をプラットフォームとしてシステム化し、現場に定着させた。
まず有給情報管理システムでは、付与日数の自動計算機能とともに、最新の有給情報を iPad 上で店舗側から確認できる仕組みを提供するなど、本部と店舗での情報共有を実現している。これまで紙ベースで 行われていた有給申請も、 iPad からの申請へと変更された。出納情報管理・売上管理システムでは、同じ iPad から店舗のマネージャーやチーフが出納情報や売上情報を現場で見られるようにした。日々の売上数字と購入した 備品情報は現場から入力して本部に報告してもらうようになっている。
「店舗と本部で情報を時間差なく共有できる共通のツールをずっと求めていました。店舗側から過去の数字も見られるようになったので、例えば前月の売上と比較して今月はど れぐらい違うかなど本部との意思疎通がしやすくなりました」（丹野氏）そして人事情報システムは、外国人労働者の在留資格情報を含めて管理できる機能を提供。
「現在では、人事部門もできていて、外国人のアルバイトの人事情報についてもそこでしっかり管理しています」と丹野氏はいう。

新システムの稼働から約1年、常にギリギリの状態だった本部での仕事も大幅に効率化された。例えば売上の前年度比較表作成に関しては、毎朝1時間近くやらなければならなかった作業がボタン1つで済んでしまい、ほとんどゼロになった。また有給情報管理についても、毎月末に2日程度かけて行っていた作業が完全になくなり、大幅な時間の節約につながっている。
そして人事情報管理では、外国人労働者の在留期間が追えるようになるとともに、情報の検索も可能となったため、業務の効率性と正確性の双方が大幅に向上している。

「おかげで私自身も、広報業務に専念できています」（丹野氏）

現在、 iPad は約30店舗に配布されている。当初は現場スタッフによる慣れないIT機器の運用に不安を抱えていた丹野氏だったが、これまで特に問題もなくすっかり定着したという。
「やはり最初のうちは操作に慣れてもらうのが大変でしたが、ほとんどのスタッフが “ スマホ世代 ” なので、一度慣れてしまえば使い方もスムーズ に理解してもらえました」と丹野氏。

これからも魚金様の成長にあわせたシステムを提供し続けていきたい。